先日、PUBGモバイル専用にKZ ZSN Proを購入しましたが、今回は純粋に良い音を安く聴きたいと思い、久々にマルチ&フルBAドライバーのKZ AS12を買いました。今回はそのKZ AS12の音質や使用感などをレビューさせて頂きます。
KZ社のマルチ&フルBAドライバーイヤホンといえば、BAドライバーを左右各3本使用したKZ AS10が大のお気に入りなわけですが、はたしてAS12はAS10を超えるイヤホンなのでしょうか。
BAドライバー6本を使った高音質・低価格な中華イヤホンKZ AS12を買ってみたのでレビューするよ
今まで中華イヤホンをたくさん買ってきました
昨年くらいからハイコストパフォーマンスな中華イヤホンが注目されてきています。中華イヤホンとは中国メーカーのイヤホンのことですが、当たり外れが激しくて正直マニア向けでした。当ブログ「オニオン座」でもこれまで中華イヤホンの記事をKZ社のイヤホンを中心に数本書いてきました。
そもそもは、嫁のせいでオーディオ好きの血が再燃してしまい、バランスドアーマチュア(以下BA)搭載のイヤホンを探しまくってイヤホン沼に入り込んだという記事が発端となっています。ちなみに現在のメインイヤホンはオーディオテクニカのATH-IM04という4BAイヤホンです。
そこで、中華イヤホンのなかでも評判の良かったKZ社のイヤホンを物色していました。
一番最初に買った中華イヤホンは、KZ ZS6でした。片方にBAドライバーを2本(高音域・中音域)、ダイナミックドライバーを1本(低音域)の計3本を使った、マルチドライバーイヤホンでした。いわゆる多ドラってやつですね。これを初めてじっくり聴いたときは本当に感動しました。
ちなみにバランスドアーマチュアは金属パーツを振動させて音を出すもので高級品が多いもの、ダイナミックドライバーは小さいスピーカーでよくイヤホンに使われているものだと思って下さい。
ちょっとオーディオ好きな人が聴くレベルの大手メーカー品イヤホンだと、ドライバー1本で1〜2万円、2本で2〜3万円、3本で3〜4万円、4本で5万円以上というのが当たり前と思います。それなのにKZ ZS6はドライバーを片側3本も使っていて5,000円ほどという超破格プライスだったからです。
KZ ZS6はそのままでも大手メーカー品の音質を凌駕する部分があり、さらにケーブルやイヤピースを交換すれば2万円位のイヤホンと競えるレベルと感じました。もちろん全てが優秀なわけでなく得手不得手はありますけどね。
しかし個人差は激しいと思いますが、私としては量感とふくよかさがウリのダイナミックドライバーと、高分解能で伸びがありやや固いBAドライバーの組み合わせが気になりました。本当に高級機種のマルチドライバーイヤホンであれば、うまいこと調整されているのかもしれませんが、私にとってKZ ZS6の低音柔らかめ&高音固めが唯一のネックでした。
すると、BAドライバーだけの多ドライヤホンが登場しました。KZ AS10でした。こちらは低音域・高音域にそれぞれ2発、高音域に1発の計5発のBAドライバーを搭載していました。これなら音域によって柔らかい固い問題はないから「買うしかない」と買ってみて、めちゃめちゃ満足したことを覚えています。KZ ZS6をあれだけべた褒めしたのがおかしいくらいでした。
そこからしばらくして、PUBGモバイル用に安くて高音質なマイク付きイヤホンを探したとき、KZ ZSNに出会いました。こちらは中低域をダイナミックドライバー、中高音域をBAドライバーという片側2ドライバーイヤホンでした。音楽用ではなかったので大して期待していなかったのですが、価格は2,000円ほどとエントリーランクの価格帯ながら頭一つ抜けた音質で気に入りました。ドライバーが片方2本だけのせいか柔らかい固い問題も気になりません。それまではiPhoneやGALAXYに付属していたイヤホンを使っていましたが、KZ ZSNに変えてから足音や銃声の方向が分かりやすくなってパブジーも捗りましたよ。
でも、当時のKZイヤホン全てに言えることでしたが、やっぱりオーディオ好きとしてはダイナミックドライバーがぼわついている感があって、価格を考えれば仕方ないかと思っていたところ、弱点であったダイナミックドライバーを大幅改良したKZ ZSN Proが数百円差で発売されたので飛びつきました。
これが見事にKZ ZSNの弱点であった中低音のぼわつきをクリアにしてくれて、「やっぱKZイヤホン最高」と感じました。KZ ZSNが中学生なら、KZ ZSN PROは高校生になったような元気と大人っぽさの両方を楽しめる低価格イヤホンでした。
さらに調子に乗り、同じく改善版ダイナミックドライバーを採用したZS10の後継機種、KZ ZS10 PROが発売されたため購入。ZS10自体はZS6の延長と思ってパスしていましたが、ZS10 PROは買って大正解。固い柔らかい問題をクリアしながら音質的にもKZ ZSN PROの正統進化・上位互換であり、元気の良いJ-POPを聴きたいときにはむしろATH-IM04よりも音楽が楽しめると愛用しています。
ここまで書いてきて、イヤホン沼に十分ハマっている自分が愛おしくも感じます。もちろん「イヤホンってのはスマホ付属品で十分だし、買うにしても1,000円位までしか払う価値がないよ」と仰る方が多いのも承知しています。
でも、数千円で大手メーカーにはできない「攻めたイヤホン」を購入し、ケーブルやイヤピースを交換して音の変化を感じるのって、ミニ四駆みたいに組み合わせの妙を楽しむようで男の子にはたまらない魅力だと思います。
さらに中華イヤホンは値段が高いから音が良い、後継機だから成長しているとは限らないという日本人の固定観念を徹底的に打ちのめす部分も宝探しのようで面白いわけです。
と、相変わらず前置きが長いのは、個人ブログの特徴とご理解頂きつつ、本題に進みます。
期待の6BAイヤホン「KZ AS12」開封の儀
Amazonなど大手ネットショップモールで蔓延している中華製品にコリゴリしている方や、恐怖の余り購入できない方もいらっしゃると思いますので、どんなパッケージかご紹介します。というわけで購入したのがこちらです。
KZ AS12のパッケージはこんな感じ。これまで購入した中華イヤホンは箱がボコボコだったり、ビニールシュリンクがビリビリだったりしたのですが今回はまあまあキレイ。
KZイヤホンには通常パッケージと簡易パッケージが存在するようなのですが、購入して手元に届くまでどちらのパッケージなのか分かりません。今回は通常パッケージでした。
パッケージ内容は、KZ AS12本体・イヤホンケーブル(リケーブル対応)・シリコンイヤピース3組(SML)といつもの感じです。
KZ AS12本体をアップした写真はこちら。
昨年後半くらいから新発売されるKZイヤホンはコネクタ形状が変更となっていて、C pinと呼ばれるものになっています。C pinは中国の高級カスタムIEMメーカー「qdc」と互換性がありますので(互換性があるのかパクったのかは知りません)、最近のKZイヤホンならqdc用の高級リケーブルケーブルも使用できるようになりました。
KZイヤホンの本体とケーブルの間にあるコネクタは3種類あり、それらA pin・B pin・C pinの違いについて簡単にご説明します。いずれも0.75ミリ2pinであることは同じです。ぶっちゃけ正確な情報がないのですが、A pinは現在ほぼ販売されておらず、旧機種は基本的にB pinを使用し、ZSN・AS16あたり以降はC pinとなります。
具体的には、A pinは、KZ ZS6 / ZS5 / ZS3 / ZSA / ED16など、B pinはKZ ZS10 / ZSR / ZST / ED12 / ES3 / ES4 / AS10 / BA10 など、C pin(qdc互換)はKZ ZSN / ZSN PRO / ZS10 PRO / ZSX / AS12 / AS16 となります。
これらピンの長さや間隔は同じなため、多少不格好ですがC pinのイヤホンは、A pinやB pinのイヤホンケーブルを使用することができます。
中華イヤホンということで念のため初期不良チェックのつもりでKZ AS12のサウンドチェックを行います。付属品のイヤホンケーブル(リケーブル対応)・シリコンイヤピースを装着して、デジタルオーディオプレーヤーXDP-30Rに刺して聴いてみます。ソースはアップルロスレスエンコードのALACで、和ジャズやaikoです。
ちなみに、パイオニアXDP-30Rは2万円少々というエントリークラスのデジタルオーディオプレーヤーでありながら左右分離DACを備え、さらに同価格帯のSONY ウォークマンにはないバランス出力を備えており、個人的に近年買って良かったガジェットの上位に君臨し続けています。XDP-30Rの後継機種XDP-20Lが販売されています。
ちょっと聴いて思ったのは、「ああ、やっぱスゲえな」ということ。エージング前のKZ社のBA型イヤホン特有の金属臭さは相変わらずですが、最近サブでよく聴いていたKZ ZSN Proと先日緊急時に使ったソニーの3,000円位のイヤホンと比較して、音場が広く、解像度が高いことが一瞬で分かりました。当たり前なんですけど、驚きました。
丸一日くらいエージングという慣らし運転を行った後、同一環境で聴き直してみました。金属臭さや固さ、そして雑味はだいぶ取れてすっきりしたサウンドに変化していました。詳しくはこの後。
マルチBAイヤホン対決!KZ AS10とKZ AS12を比べてみた
KZ AS10と今回購入したKZ AS12を比較してみます。大きさはほぼ同じですね。
微妙にステムの角度が変わったようです。
KZ AS10は従来の2pinになります。
肝心なKZ AS10とKZ AS12のサウンドの違いについてお話しします。
まず、KZ AS12のルーツとも言える名機KZ AS10についてあらためて振り返ります。そもそもKZ AS10はこれまでのKZイヤホンの中で最も素晴らしい商品と個人的に思っています。5,000円程度で買えるマルチBAイヤホンでありながら、音質はKZらしからぬ丁寧な作りとなっていて、音場の広さや解像度の高さ、分解能の高さ、各音域のつながりとも確実に価格を超えた商品と思います。
特にイヤホン選びもせず、あるいは選び方が分からないまま有名メーカーの1万円〜1.5万円程度のイヤホンを買うくらいなら、KZ AS10をオススメしたいくらいです。
ただ、この価格でこの音質にこれ以上望んではいけない気もしていますが、惜しむらくはKZ AS10の低音は雑な感じがします。普通の人は気にならないはずですが、オーディオ好きから言わせるとムリに出している感じです。BA型イヤホンは高音域がきめ細やかで解像度の高いものですが、低音域は得意ではないと言われている通りでした。
そしてKZ AS10より3,000円ほど高いKZ AS12を聴いてみます。KZ AS12のサウンドの傾向はKZ AS10に似ていて、ややドンシャリ気味なフラット。KZ ZSN Proに感じたような「元気の良さ」というより「大人の音」という印象です。
やはり何といってもBA型イヤホンの特徴であるボーカル・ピアノ・ストリングスといった中高音域が鮮やかで伸びがあるのに、高音が特に強調されておらず刺さらないので、普段使いに最適に思いました。
特に私は普段、aikoなどの女性ボーカルや和ジャズ、Perfumeやゲーム音楽といったデジタルミュージック系、星野源やコブクロなどの男性ボーカルをよく聴きますが、このへんのジャンルにはぴったりだと思います。
逆にハードロックやハードテクノが好きな人には低音の量感が物足りないかもしれません。またカチッとした音の印象があるため、アナログレコードっぽい音質が好きな人がクラシックやフォークを聴くには好き嫌いが分かれるかと思います。
KZ AS10との比較に戻ると、KZ AS12の方が全音域においてより濃厚な感じがします。そして低音は締まりがあって上記欠点が改善された印象です。特にドラムのハイタム・ミドルタム・ロータムのフィルが聴き取りやすくなっていました。天才ドラマー佐野康夫氏の神的なゴーストノートもわりと聴き取れるレベルです。
KZ AS12がすっかり気に入ったので、久しぶりにまともなリケーブルケーブルを購入しました。こちらの銀メッキ16芯です。
当然ながら、qdcコネクタ・KZ C PINです。そしてガチで聴きたいと思いまして、イヤホンジャックは2.5mmのバランスケーブルにしました。
付属品のイヤホンケーブルとの太さを比べてみます。写真ではわかりにくいかもしれませんが3倍近い太さになりましたが、素材がしなやかなので扱いやすいです。
付属品のイヤホンケーブルにあった、耳の後ろ側からかけるシェアがけ用の透明樹脂がありません。透明樹脂があると装着性がいいけど絡みやすいんですよね。
XDP-30Rの2.5mmバランスイヤホンジャックに繋いで聴いてみます。
すげえぞこれ。ベースやドラムは不自然ではない程度に太く、かつ締まりがよくなり、ピアノ・ヴォーカル・ストリングスはすっと伸びるようになりました。音場が広くなり、ヴォーカルや楽器の定位もぐっとよくなりました。プレイヤーのXDP-30R自体、バランス出力がやたら高音質なことでも知られているため、この音質向上はケーブルの品質だけではないはずなのですが、音質があからさまに良くなったのはKZ AS12のポテンシャルが高いからとも言えます。
KZ AS12とKZ AS10のどっちが「買い」か?
全国1億2,000万人の中華イヤホン好きが気になる、低価格で高音質なフルBA型イヤホンを買うなら、KZ AS12とKZ AS10のどっちがオススメなのかあらためて考えます。
普通のレビューブログなら手放しで新しいKZ AS12をごり押しするところですが、オニオン座は違うのです。
すっごくオーディオマニア的な聴き方をしてしまうと、KZ AS12の方が歪みがわずかに多く聞こえてしまいました。たまたまハズレ個体を引いてしまったか、エージングが足りないのか、小さなボディにたくさんのBA型ドライバーを詰め込んだ影響なのか、それともそういうBA型ドライバーが使われているのかは分かりません。
音の歪みというのはいわゆるノイズとは少し違うのですが、音が濁って聞こえることを言います。普通の方にとっては全く気にならないレベルだとは思いますけどね。
そもそもBA型は金属パーツを振動させて音を出す構造となっていて、シャープな音が出せる反面、歪みが発生しやすいものとなります。そのコントロールがコスト原因でもありメーカーの腕の見せ所となります。高級BA型イヤホンとKZのBA型イヤホンの本質的な違いはここで、オーディオマニアにしか分からないかもしれない「静寂性」の差となります。
そこでオニオン座としては2つの提案をします。
オーディオマニアではない人で、音質が良くコスパが高い上、人とは違うイヤホンが使いたい方にはKZ AS12は十分オススメできる商品です。やはりKZ AS10よりも改善されている部分が多々あるからです。間違いないと思います。
全国民の99.9%以上がオーディオマニアではないであろうことを考えると、普通にKZ AS12は買って後悔しないコスパ最高な中華イヤホンだと思います。
逆に0.01%未満のオーディオマニア志向で、音の量感や音圧は少し細身でもいいからすっきり解像度の高いイヤホンを安く買いたいなら、旧機種となるKZ AS10をオススメします。
まあこの記事をご覧になっているようなマニアなら、きっとKZ AS10を既にお持ちのはずだし、差を体感するために数千円をかけることなどいとわないと思いますので、両方買ったらいいと思います。
まとめ
片側6本・両側12本のバランスドアーマチュアドライバーを搭載した中華イヤホン「KZ AS12」の開封レビューと、KZ AS12のサウンドチェック、KZ AS10との比較をご紹介しました。
そして、KZ AS12は買った方がいいかどうかという点においては、基本的には名機KZ AS10の良いところを踏襲し、改善していることから「買い」だと思います。
またKZ AS10は終息するであろう2pinコネクタなのに対して、KZ AS12は今後メインになるであろうqdcコネクタ(KZ社のいうC PIN)を使用していることから、KZ AS12の方がリケーブルケーブルの選択に幅が広がるなどの将来性にも期待できます。
KZ AS10を既にお持ちの方は、必ずしも買い換えるほどの圧倒的な音質の差はないのかもしれませんが、ではどのくらいの違いがあるか知りたいですよね。
ともあれ、KZ AS12はすっかり気に入りました。あまりオススメできないのですが、現在私がハマっている岩盤浴の中で音楽を聴くときにいつも使っています。5万円ほどするATH-IM04を高温多湿の中で使うのは気が引けますが、KZ AS12ならいいかなと思いましてね。リラックスして汗をかきながら聴く音楽は最高です。
それでは本日ご紹介したアイテムを振り返ります。今回の主役、6BAイヤホンのKZ AS12です。大手メーカー品なら10万円じゃ効かない多ドラ構成が10分の1以下で手に入ります。
発売から時間が経過して値下がり、鬼安となっている5BAイヤホンKZ AS10はこちら。この価格にしてこの高音質。コネクタがB pinであること以外は申し分ないと思います。
こちらも同じくらいの値段で買える、4BA+1DDイヤホンのZS10。量感があって歯切れの良い低音と、それなり伸びがあるのに刺さらない高音が魅力です。意外とこちらの方が一般受けする音かもしれません。
2.5mmジャックのバランス出力に対応した、ちょっと贅沢な銀メッキ16芯リケーブルケーブルはこちら。電気的に優れたバランス接続と相まって、サウンドが二皮むけます。SONYウォークマン上位機種をお使いの方は4.4mmを選択してください。
普通の3.5mmジャックの音声出力に対応したバージョンはこちらです。付属品のイヤホンケーブルとは次元の違う音質が楽しめるでしょう。イヤホンケーブルを変えると音が変わるってのは実際やってみると本当に楽しいですよ。
以上、ブログ「オニオン座」がお届けしました。最後までご覧下さり誠にありがとうございました。