思ったよりも早く、Bluetoothワイヤレスイヤホンから有線イヤホンへ回帰する人が増えてきました。やはり同じ金額なら有線イヤホンの方が高音質でコスパがいいから、という主な理由の気がしています。
とはいえ、Bluetoothは非常に便利であることは変わりなくTPOに合わせて使いたいものです。そして使う時にはなるべく良い音を楽しみたいのも事実。本稿では、音質を大きく左右する、オーディオに関するBluetoothコーデックについてお話しします。
オーディオ用Bluetoothコーデックとは
Bluetoothコーデックとは、Bluetooth技術を使用してデータを転送する際に使用されるデータ圧縮および伝送のための規定やアルゴリズムのことを指します。本稿ではオーディオ用のコーデックに絞ってお話しを進めます。
オーディオ用のBluetoothコーデックの場合には、オーディオファイルを圧縮して転送し、受信側でそのデータを再度デコード(解凍)して音声として再生する手順を管理する方法やプロトコルを定義しています。
以下は、Bluetoothコーデックの基本的な役割を簡単に説明したものです:
圧縮: Bluetoothには帯域幅の制限があるため、大容量のオーディオデータをそのまま送信するのは非効率的です。そのため、コーデックはオーディオデータを圧縮する役割を持っています。
伝送: 圧縮されたデータをBluetooth接続を通じて別のデバイスに送信します。
デコード: 受信側のデバイスは、受信した圧縮データをデコード(解凍)し、元のオーディオデータを復元します。このデータはその後、スピーカーやヘッドフォンから音声として出力されます。
Bluetoothコーデックの種類や規格によって、音質、伝送速度、遅延などの特性が異なります。例えば、高音質を重視するLDACやaptX HD、遅延を最小限にするaptX LLなど、使用目的や状況に合わせて最適なコーデックが選択されます。
いずれも圧縮の際に不可逆圧縮をします。つまり大なり小なりの音質劣化は生じます。しかしBluetoothオーディオの進化とともに、新しいコーデックが開発され続けており、それに伴い音質や機能性が向上しています。
主要なBluetoothコーデックの種類と特徴
これらBluetoothコーデックを利用するには、送信側であるスマホ・DAPと、受信側であるBluetooth DAC・Bluetoothイヤホンの両方が同じコーデックに対応している必要があります。
※下記ビットレートはLDACを除き1ch分(片方)です。実際にはステレオなので2倍となります。
SBC (Subband Coding)
開発元: Bluetooth SIG (Bluetooth Special Interest Group)
特徴: Bluetoothオーディオのデフォルトのコーデック。すべてのA2DP対応デバイスでサポートされ、汎用性が高い。
ビットレート: 最大約 328 kbps
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 48 kHz/16ビット
AAC (Advanced Audio Codec)
開発元: Fraunhofer IIS, Dolby, Sony など複数の企業
特徴: Appleのデバイスや一部のAndroidデバイスで主に使用。iTunesの音楽と相性が良い。
ビットレート: 最大約 250 kbps
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 48 kHz/16ビット
※AACというオーディオファイル形式もあります。開発元やスペックは概ね同じです。
aptX
開発元: Qualcomm
特徴: 低遅延と高音質の転送を特徴とする。ワイヤレスヘッドフォンやスピーカーでよく使用される。
ビットレート: 352 kbps (for 44.1kHz) / 384 kbps (for 48kHz)
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 44.1kHz, 48kHz/16ビット
aptX HD
開発元: Qualcomm
特徴: aptXの進化版。24ビットの音楽ファイルをサポートし、より高解像度のオーディオ転送を提供。
ビットレート: 576 kbps (for 48kHz)
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 48kHz/24ビット
aptX LL (Low Latency)
開発元: Qualcomm
特徴: ビデオ視聴やゲーム時の遅延を最小限に。ビットレートやサンプリングレートはaptXと同じ。
ビットレート: 352 kbps (for 44.1kHz) / 384 kbps (for 48kHz)
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 44.1kHz, 48kHz/16ビット
aptX Adaptive
開発元: Qualcomm
特徴: 動的にビットレートを調整。接続状態やコンテンツの種類に最適化。
ビットレート: 可変、最大 276 kbps – 420 kbps
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 96kHz/16ビット, 24ビット
LDAC
開発元: ソニー (Sony)
特徴: 高解像度オーディオのワイヤレスストリーミングを可能にする技術。多くのソニー製のオーディオデバイスに組み込まれていますが、オープンソース化しているため多くのデバイスで使えるようになりました。
ビットレート: 330 kbps / 660 kbps / 990 kbps
サンプリング周波数・ビット深度: : 最大 96kHz/24ビット
良質なBluetoothイヤホンかポータブルDACを使うなら、再生デバイスはスマホで十分
Bluetoothイヤホンを使う場合、DACは再生デバイス側(スマホ・DAP)でなく、Bluetoothイヤホン側のものを使うことになります。ポータブルDAC※も同様です。理由は上記のBluetoothコーデックではデジタル転送を行うため、転送先でデジタル→アナログ変換を行うからです。ご存じでしたか?
※上記「ポータブルDAC」には、Bluetooth DAC(無線)とドングルDAC(有線)がありますが、前者はBluetoothで、後者はUSBケーブルでデジタル転送を行い、DAC内でデジアナ変換を行います。
つまり、もし高音質なBluetoothイヤホンかポータブルDACを持っているなら、再生デバイスは安いDAPでもスマホでも音質は同じなわけです。これ、重要です。
ただ、Bluetoothイヤホンはサイズやコストの面から優秀なDACチップやアンプをなかなか搭載できません。なので、Bluetooth DACかドングルDACの方が安価に音が良くなる傾向にあります。
実際、有線イヤホンに20万円とか普通に払っちゃう人でも、高級DAPを買わず、スマホにドングルDACをつないで音楽を楽しんでいる人はたくさんいます。動画やゲームも高音質になりますからね。
実際にオニオン座が買って使ってオススメできるBluetooth DACが2つあります。それぞれ音のキャラクターが違っていて使い分けるのも楽しいものです。
Bluetoothコーデックはどの方式も音質は劣化します。なので無線でなくていいなら、Bluetoothを使わずにスマホで高音質を楽しめるドングルDACがオススメです。私は最近こればっかり使ってます。
まとめ
メモ代わりにBluetoothコーデックについてまとめてみました。音質・コスパ・使い勝手のバランスを楽しく選びましょうね。
以上、最後までご覧くださりありがとうございました。ブログ「オニオン座」がお届けしました。