入場料が激安なお出かけスポットが大好きで博物館も大好きな我がファミリー。今回は小学生の娘が興味を示すか微妙だったので私一人で行ってきました。2015年にリニューアル＆移転した「たばこと塩の博物館」です。
夏休みの自由研究に！東京都墨田区の「たばこと塩の博物館」へ行ってきた
「たばこと塩の博物館」に到着
「たばこと塩の博物館」の最寄り駅である都営浅草線「本所吾妻橋駅」より徒歩10分。倉庫街のような町並みの中にたばこと塩の博物館はありました。
ちなみに自転車と50cc以下の原付バイクを駐車できる無料駐輪場も完備しています。
営業時間や入館料などはこんな感じ。入館料は大人100円、子供50円という良心的な価格です。
現在行われている期間限定の特別展は「着物と装身具に見る江戸のいい女・いい男」です。別料金無しで観ることができます。
さっそく受付に行って入場料を払います。
入館券をゲット。ワクワクなんだぜ？
一階のエントランスは落ち着いた雰囲気です。無料ロッカーも完備。
何気なく900kgの岩塩が鎮座しています。ヴィエリチカ岩塩（ポーランド）に竜宮城などの浦島太郎をモチーフにしたものだそうです。
渋谷に会った頃のたばこと塩の博物館の模型があります。このとき行けなかったんだよな・・・
たばこと塩の博物館は5階建てとなっています。メインとなる常設展示室は2階と3階にあります。写真がボケててすんません。
1階にはミュージアムショップがありましたが帰りに観るとして、エスカレーターで2階に上がります。ちなみにミュージアムショップは入場券を買わなくても利用することができます。
2階常設展示室「塩の世界」
2階に上がるとおしゃれなエントランスの「塩の世界」があります。さっそく入ってみます。
まず「生命をささえる塩」と題してビデオ上映がされています。
ちょっとビデオ内容を要約しますね。そもそも、なぜ生物には塩が必要なのか。生命の誕生して単細胞生物から多細胞生物になったとき、生命の源である海に触れない部分が出てきてしまう訳です。そこで体内に海を巡らせるために塩を摂取するようになったということです。
サバンナのような海のない地域であっても、象がその優れた嗅覚を用いて岩塩層を掘り出し、しみ出てきた塩水を他の草食動物が飲んでいる様子がビデオに収録されていました。
次は「世界の塩資源」です。世界中の岩塩や塩の結晶が展示されています。
世界中の海水や塩湖、岩塩などから人類は年間2億8千万トンもの塩を作り出しているというお話です。
かの有名なウユニ塩湖で切り出された塩のブロックを実際に触ることができます。
2002年ソルトレイクシティで開催されたオリンピックの記念品でしょうか。町の名前の通りソルトレイクシティは塩湖があるのだとか。
岩塩は、海水が地殻変動などで陸に閉じ込められて結晶・堆積し、地下に埋もれてできたもので数億年～数百年前の海水の化石とも言えます。
聖キンガ礼拝堂をモチーフに、特別許可を得たヴィエリチカ産岩塩を用いてポーランドの職人によって製作された岩塩彫刻「聖キンガ像の祭壇」です。石像とは異なった風合いです。
岩塩から塩を得るためには、単に岩塩を掘り返す方法（乾式採鉱）だけでなく、岩塩層に水と空気を送り込み溶け出した塩水を回収して煮詰める方法（溶解採鉱）もあるそうです。後者の方が不純物を取り除きやすいため後者の方が食用に向いているとのこと。なるほどねえ。
次は「日本の塩づくり」です。とりたてて岩塩や塩湖のない日本ではどのようにして塩を作ってきたのでしょうか。
雨が多い気候のため天日製塩も難しい日本は、大昔から燃料を使って海水を煮詰める塩づくりが工夫されてきたそうです。
縄文時代や弥生時代、古墳時代の遺跡から発掘された塩を作るための土器も展示されています。
一例として能登の揚浜での、いわゆる昔ながらの製塩方法について解説されています。
①塩浜に海水をくみ上げる ②くみ上げた海水を塩浜にまく ③海水をかけた砂を天日に干して塩混じりの砂を作り、集める ④集めた砂に水をかけ濃い塩水を取る
⑤塩浜でできた濃い塩水を鉄鍋に移し強火で約3時間煮詰めてから冷ます ⑥冷めた濃い塩水を濾過槽に通し石膏などを取り除く ⑦濾過した濃い塩水を一晩中火加減しながら煮詰める ⑧塩がたまったら火を落とし水分（にがり）が残る程度に仕上げる
最初から塩水を全て煮沸するのでは燃料が大量に必要となって大変なため、ある程度の濃い塩水を用意してから煮沸するようになってきました。これを「採かん」と言います。
効率よく塩を生産するための流下式塩田なども開発されます。最初に考えついたやつは偉い。
流下式塩田の模型も展示されています。
現在の製塩プロセスはこちら。かん水（濃い塩水）を得るのに自然の力を使わず、イオン交換膜透析層で水から塩分を漉して行います。
もちろん模型も展示されています。完全に工場ですな。
最後は「塩のサイエンス」です。もしかしたら自由研究の宿題をやるにはこのコーナーだけで充分なんじゃないかな。
「くらしと塩を科学する」と題して、身の回りにある塩の使い道などが解説されています。
実は塩は単なる食品ではなく、工業でも大きな役割を持っています。むしろ年間消費量のうち、食用はわずか15%で、残りのほとんどは塩素や苛性ソーダなど食用以外の分野で使われています。
ちなみに日本国内で使用される塩の大部分88.4%はメキシコやオーストラリアからの輸入に頼っています。
その他、塩が細胞膜から水を吸い出す作用や防腐効果などの科学的なお話がわかりやすく解説されています。
するとコーナーの中央に配置された巨大なタッチパネルテーブルに目がいきます。周りには20個の塩のサンプルが置かれています。
塩の大きさは様々です。ケースを裏返すと何やら模様が。
塩のケースをタッチパネルテーブルに置くと、塩の種類などが表示されたり･･･
パッケージなどの解説が表示されます。
「塩作りを科学する」では海水に含まれる塩について掘り下げられています。海水の97％は水で、塩は3％にすぎません。
そのうち77.9％が塩化ナトリウムで残りは様々なミネラルで構成されています。
「からだと塩を科学する」では、体の中で大切な働きをしている塩について解説されています。
血液にはいつも同じ濃さ（約0.9％）の塩が溶けていて、結晶や細胞内体液とイオン交換がなされています。
体内の塩分は血液ばかりに含まれているかと思いきや、実は骨の中にも血液と概ね同量の塩分が含まれています。
「塩の結晶工作」では、濃度や温度など、塩の結晶の作り方が解説されています。
これを応用するとこんな塩の結晶の船なんかも作れるそうです。
結晶の作り方によっては色んな形のものを作ることができます。
「トレミー」という結晶。塩水の表面に浮かんだ結晶が地震の重さで一段ずつ沈みながら成長したものだそうです。不思議ですな。
3階常設展示室「たばこの歴史と文化」
入ってみると目を引くのが石で作られた神殿です。7世紀末頃にマヤ文明パカル王の息子カン・バラム２世によってメキシコ南部に建築されたピラミッド神殿「十字の神殿」のレプリカとのこと。
これが神殿を正面から見た写真です。右側にある模様をよく見てみると・・・
思いっきりたばこを吸っています。当時の神様はたばこをすっていたのでしょうか。ということで7世紀頃からたばこ文化はあったということだそうです。
「たばこ文化の発生」では、まずナス科タバコ属に分類される2種類の栽培種、ニコチアナ・タバカムとニコチアナ。・ルスチカが展示されています。これらは南アメリカのアンデス山中で誕生したと言われています。確かにナスの葉っぱに似ていますねえ。
南米で作られた紀元前から中世くらいまでの「林屋コレクション」が展示されています。
15世紀末にヨーロッパ人が姿を現すまでのアメリカ大陸では、たばこは聖なる植物として儀式や薬として用いられていました。7世紀前後のマヤ地方の彩文土器にはたばこを吸っている人物が描かれています。
南米アンデスの古代文明においては、たばこよりコカの葉がより重要な役割を果たしていたとのこと。ハッパでキマってたのでしょうか。。
「世界のたばこ文化」では、南米からアメリカ、そしてヨーロッパ、さらに世界中にたばこが広がっていった15世紀末頃から現代までのものを展示しています。
世界中のパイプなどの喫煙グッズが展示されています。古いものが殆どですが･･･
ダンヒルのウィークリーセットなんてものまで。なぜ毎日パイプを変えるのか理解不能。。
北アフリカやイスラム世界だと、アメリカ大陸には存在しなかった水パイプがたくさん。
ヨーロッパでは、パイプ用のたばこをブレンドして保存するための「たばこジャー」なども使用されました。知らなかったなあ･･･。
またヨーロッパへ伝えられた当初から19世紀まで、たばこは喫煙よりも粉末状にしたたばこを鼻から吸う「嗅ぎたばこ」が主流だったそうです。
葉巻はスペインなどの一部の地域に限られていましたが、ナポレオン軍のスペイン侵攻（1808-1814）がきっかけで上流階級を中心に広がったそうです。
湿度を保ちながら葉巻を携帯できるシガーケースなども開発されました。
葉巻の自動販売機なんてものまでありました。
北米ネイティブアメリカンでは、インディアンが使っていそうな巨大なパイプが。斧の形をしたトマホークパイプなんかは頭どうかしている。
そしてアメリカ。パイプと言えばマッカーサーのイメージ。
中国へたばこが伝えられたのは17世紀前後とのこと。ジャッキー・チェンのお師匠さんが吸っていそうな長いキセルが展示されています。
携帯できる水パイプである水烟袋（すいえんたい）なんてグッズも。
中国以外のアジア地域では、キセル喫煙が定着した朝鮮半島や中国の影響を受けたベトナム、スペインから葉巻が伝えられたフィリピンなど多様なたばこ文化が生み出されました。
世界のたばこパッケージも展示されています。
まずアメリカ。日本でも見慣れたパッケージがあります。
北朝鮮のものまであります。
世界中のたばこポスターも。なかなか渋いですな。オシャレなカフェに貼ってそう。
お次は日本に焦点を当てた「江戸時代のたばこ文化」です。
江戸時代のたばこ屋さんの実物大模型も展示されています。夫婦が営む小さなたばこ屋さんでは、夫がたばこの葉を刻んで、妻がたばこの葉を巻いていたそうです。
日本では、たばこは江戸時代初期に広がりました。その後、世界に類がないほど細い刻みたばこをキセルで吸うという文化が根付きました。
日本へのたばこの伝播は、16世紀後半、ポルトガル人とスペイン人によるものと言われています。
日本らしい風俗画とたばこや･･･
護身用キセル「けんかぎせる」など。
江戸時代のたばこに関する禁令と受容について。たばこ税は江戸時代からあったということに衝撃。
当時、たばこは現在の宮城県以南の各地で作られて、土地ごとに味や香りに特徴があったため当時は産地名で呼ばれていました。
武蔵国でも秩父でたばこが作られていました。また写真に写りきれませんでしたが沖縄本島でも作られていました。
江戸時代当時の火打ち石なども展示されています。
幕末から明治にかけて、葉巻やパイプ、紙巻きたばこが日本に入ってきました。なかでも輸入紙巻きたばこの洗練されたパッケージには日本人は驚いたそうです。
「たばこメディアウォール」では、すっかりたばこ文化が定着した1900年代から現代までの遍歴が描かれています。
明治37年（1904年）、たばこは専売制となり、当時は大蔵省専売局、後には日本専売公社が製造・販売。昭和60年（1985年）専売制は廃止され、たばこ事業は日本たばこ産業株式会社（JT）に移管・民営化されました。
江戸時代よりたばこは全国各地で製造されていましたが、明治31年（1898年）、煙草草専売法施行により葉たばこを国から購入することになりました。このため大量生産とたばこ製造業者の合併が進み、次第に宣伝に力を入れるようになりました。
当時のたばこ王と呼ばれた岩谷商会と千葉商会、村井兄弟商会のたばこパッケージがこちらです。
第一次世界大戦前後のたばことか･･･
第二次大戦の頃にはたばこのパッケージも英語表記が禁止になったり･･･
昭和感たっぷりの高度成長期のたばこ。
日本万博博覧会の際には、今では考えられない「記念たばこ」があったり。
我らアラフォー世代が子供の頃に見たたばこってこの辺ですね。
日本専売公社が民営化した頃のタバコです。中学校の頃、フロンティアメンソールを吸って先生に怒られた同級生がいました。彼は元気でしょうか。
たばこのパッケージに毒々しいメッセージが表示されるようになったのは2001年頃。
たばこメディアウォールの下の方には引き出しがあって、多数のパッケージが展示されています。私が吸い始めた頃のキャビンもありました。
たばこメディアウォールの向かい側には昭和レトロなたばこ店がありました。店の内部も結構細かく作り込まれていました。
懐かしい自動販売機。当時のたばこは安いですなあ。
これで「たばこの歴史と文化」はお終いです。
外に出ると視聴覚ホールがありました。中には入れませんでした。
そして、さすが「たばこと塩の博物館」です。喫煙所がしっかりありました。
ああ、うまい。あれだけたばこグッズを見ると吸いたくもなります。
4階「図書閲覧室」
たばこと塩に関する資料を自由に見ることができる図書室となっています。
小学生向けのわかりやすい本から専門書まで幅広く用意されています。
私が気になったのは、記念たばこと観光たばこのスクラップブックです。
全国交通安全運動の記念たばことか、今では考えられません。
京都の金閣寺と舞妓さんの観光たばこ。いい時代でしたねえ（遠い目）。
ちなみにここにはコピー機も用意されていて1枚10円でコピーすることができますが、所蔵品をコピー又は撮影する際にはルールがありますのでご注意ください。私も複写申請書を書かされました。
5階「多目的スペース」
ここでは飲食することができます。お弁当などの持ち込みも可能ですが、ゴミは持ち帰るルールです。
1階「ミュージアムショップ」
たばこや塩に関するグッズや資料を購入することができます。
ちょっと買いそうになったマッチ。芯のところに顔が描かれていて箱も可愛いの。
マッチ箱をモチーフにデザインされたメモノートもオシャレです。
ただ、小さすぎじゃね？
日本国内外の塩も販売されています。
特別展にちなんだ小物や本もありました。
買うか結構悩んだ塩の結晶工作キット。小学生の自由研究の工作代わりにもいいんじゃないでしょうか。
キセルや嗅ぎたばこも販売。
まとめ
普段何気なく使用している塩が、古代から人間の工夫によって作られてきたことにはなかなか感心しました。
入場料が100円ということなので、あまり期待しないで行ったのですが敷地面積に反して情報量が豊富でわかりやすく、コストパフォーマンスの高い博物館だと思います。
今回、私が愛煙家なものでたばこの記事が少し長くなりましたが、たばこを吸わない方であっても「塩の世界」は充分に楽しめると思います。とりわけ小学生の夏休みの自由研究にはもってこいだと思います。お子さんが身近な塩からサイエンスへの興味を持ってくれるといいですね。
お出かけデータ
営業時間など
開館時間 10:00-18:00（最終入館17:30）
休館日 月曜（ただし祝日の場合は翌日）・年末年始
TEL：03-3622-8801
アクセス地図
住所：東京都墨田区横川1-16-3
都営浅草線「本所吾妻橋駅」より徒歩10分・東京メトロ半蔵門線「押上駅」より徒歩12分
公式サイト
https://www.jti.co.jp/Culture/museum/index.html
以上、最後までご覧くださり誠にありがとうございました。他にもお出かけ記事をご用意していますのでどうぞごゆっくり。